移住のキッカケについて
ー日高川町に移住しようと思ったキッカケについて教えてください。
ゆりか:和歌山(県)には、引っ越したいなってずっと思ってたんよな。
いくみ:元々、和歌山市が仕事場だったんですけど、気候とか環境がすごい良かったんですよ。冬でも割と暖かくて。だから、和歌山県には行きたいと思っていました。(和歌山県の中で)日高川町を選んだ理由は、仕事で椿山ダムに来たことがあって「ええとこやなぁ」と思ってて、家族で遊びに来たことがキッカケですかね。
ーそれから家探しをし始めた?
いくみ:そうだったと思います。わかやま空き家バンク(現:わかやま住まいポータル)を見てた時に、「遊びにいった場所の近くに物件でてるやん!」って思って。それで内覧に行った感じですね。そしたら、すごい良い家で…。
ゆりか:私は「買いやな!」ってすぐに思いました(笑)
いくみ:その時は、貯金もほとんどなくてお金は足りなかったんですけど、めちゃくちゃ素敵な場所やったし、家主さんも応援してくれる感じがあったから決めた感じですね。
ゆりか:私は、子育ても大きい要素かな。子育ての事を考えたら「都会でずっと住みつづけられんかな」という想いがあった。正直、都会におった時は、ちょっと病んじゃってたんですよ。
いくみ:めっちゃ痩せてたもんな。僕も子供が生まれて「お金稼がなあかん!」って気持ちになってたから、昼仕事して夜バイトするみたいな生活してたんです。だから、家には全然居れんかった。仕事から帰ってきて、寝るだけみたいな生活してました。
ゆりか:そう。いくちゃん(旦那さん)が、めっちゃ頑張ってるのも分かってた。だから「私も子育て頑張らなー!」って思ってたんやけど、子供を預けてたインターナショナル幼稚園の先生から、「発達センター(児童発達支援センター)に相談した方がいい」みたいな事をいわれてしまって…。子供は子供で、「(幼稚園に)行きたくないー!!」ってすごい嫌がるし…。そういう状態で、ネットとかで色んな事を調べるほどに不安にもなるしで、毎日泣いてましたね。
都会だと、やっぱり先生の数に対して、子供の数が多いから寄り添った対応って難しいんかなって思う気持ちもあったし、私は私で、あまりちゃんと調べずに幼稚園に入れてしまった。だから、幼稚園とかじゃなくて保育園に入れたかったっていう気持ちもあったんですよね。
日高川町に移住してきてからは保育園に入園させてもらいましたけど、環境が変わってから子供もめっちゃ変わって、保育園に行くことを嫌がることも少なくなったし、保育園から「ただいまー!!」って楽しそうな声で帰ってくるのが嬉しいんです。
仕事や暮らしの変化について
―移住後は収入や暮らしはどうなりましたか?
いくみ:収入は半分ぐらいになりましたね。でも、生活費も半分以下に出来ているので生活は問題なく出来てるし、自分が理想にしていた生活ができてます。ただ、移住してから1年ぐらいは、気持ち的には色んな葛藤がありました。
僕の仕事場の周りの方達って、週5~6とかでがっつり働いてるんですよ。だから、僕も「もっと頑張らなあかんのかなぁ…」とか「家におって嫌がられてへんかなぁ…」みたいな普通というか常識から外れた生活をする事に不安な気持ちがありました。
でも、不安な気持ちがある中でも、稲作にチャレンジしてみたり、今まで計画的にしてこなかった貯金をしてみたりする中で、ちょっとずつやけど不安が薄まってきたんですよね。
「1年分の米つくれた!食べるもんには困らんわ!」
「ちょっとずつやけど貯金も出来てるわ!」
「俺、いけてるわ!このままでええわ!!!」
って感じで。(笑)
僕は、仕事は必要な分だけ働いて、家族の時間だったり、自分で創意工夫する時間を大事にする生活がしたかったんですよ。都会での生活って、なんぼ頑張って仕事しても、稼ぐのと同時にどんどんお金も出て行っちゃうから全然足りなくて。だから、お金を稼いでサービスだったり物を買う事を重視する生活じゃなくて、お金であったり時間を節約することを考えたり、試行錯誤するために時間を使う生活がしたかったんです。
小さいことやけど、洗剤とかも粉せっけんから自分でつくってるんですよ。お皿洗いも、体洗うのも、洗濯するのも、ぜんぶ自家製の石鹸で統一してるんで、物を選ぶ時に迷わないからお金だけじゃなくて時間の節約にもなってますね。
勿論、(既製品を買うのと比べたら)ひと手間はかかるんですけど、そのひと手間を楽しめて、健康的なものを作れて、節約にもなるんやったら、それが一番良いじゃないですか。「買うことで解決する」っていうことが常識化しちゃってるけど、自分で作ってみるっていうことも大事な選択肢やと思うんです。
地域との関わりについて
ー東家には、ご友人が良く遊びに来ていますね
ゆりか:私らは、旅とか音楽とかが好きやから、いろんな友達が遊びにきてくれるんですよ。中には、顔にタトゥーとか入ってる友達もいたりして、初対面の人からは、誤解を受けちゃったりもするんやけど、単にファッションが好きなだけでめっちゃ良い奴なんですよ。
そういう子が遊びに来た時に、一人やったら「なんか変わった奴きたな」って目で見られると思うんです。でも、私が一緒について地域の人に紹介する、っていうワンクッションがあるだけで、みんな安心してめっちゃ優しく接してくれるんです。それは、私らが日頃から祭りだったり、地域の人と楽しく関わらさせてもらってるからなんかな。
ーお友達とはいえ、毎週のように受け入れるのは大変だったりしないですか?
ゆりか:めちゃくちゃ大変ですね(笑)。ずーっと揚げ物してる日もありました。(笑) でも結局、私は人をお世話するのが好きなんやと思う。来てくれる友達とかは「なんでそんなにおもてなし出来るん?」って不思議がってますね。私は、こっちに移住してから地元の人からめっちゃ良くしてもらってて、嫌な気持ちになることが全然ないんですよ。だから、そこまで出来るんかなー。
ー見返りは求めてない?
ゆりか:正直、「今度、遊びに来るときには、なんかお土産持ってきてやー!!」とはめっちゃ思いますよ(笑)
でも、私が都会で子育てとかで悩んでた時、相談にのってもらった方がいるんですけど、その方に田舎へ移住することを報告した際にもらった言葉があるんです。「あなたの選択は、あなたにとっても子供にとっても良いことやと思う。子供をあまり囲ったりとかせんと、自然に身を任せてあげてね。でも、あなたも田舎に行くって決めたんやったら、ボランティアとかそういう気持ちをたまにはもって生きていってね。」って。
その時は、あんまりボランティアとかって柄じゃないわぁ、って思ってたんですけど、そういう気持ちを持って人と接してると、「なんかいい事しかないな」って最近は感じてます。疲れることも多いし、見返りを全く求めてないという訳ではないんやけども、結果的に喜んでくれたり、楽しい時間が過ごせたらそれでいいか、って思える気持ちは芽生えてきましたね。いつか何かで返って来るやろって信じてるし(笑)
いくみ:あんま深く考えんようになったな。(笑)
これからしてみたい事について
いくみ:僕らの住んでる地区全体を、日本人だけじゃなくて外国人も含めて、自分を見つめなおす時間がとれる観光地のような保養所にしたい!っていう大きなイメージは持ってます。平地区って、立地的にもええし、色々な施設とかもあって人に来てもらえる可能性をめちゃくちゃ秘めてると思うんですよ。
平地区周辺の地図
ゆりか:遊びに来てくれた友達みんなが「めっちゃええ所やなぁ。また遊びに来たいわー!」って言ってくれるんですよね。これって、私の友達だけじゃなくて、外国の方とかにも感じてもらえると思うんです。
今は、私の家に友達が遊びに来てくれてるだけやけど、平地区全体で来てくれる人達を受け入れられるような空間づくりができたら もっと面白いやろなーって思うんです。宿泊施設であったり、交流できるカフェであったり、温室ガーデンであったり、アーティストの展示会のようなものがある平地区っていうのを理想のイメージとしては持ってますね。
こういう話を色んな人に話してるんですけど、いつの間にかその話をまた別の人が知ってくれていて応援してくれてる。具体的に、何から始めたらいいか。自分達に何が出来るか。っていう事は、まだまだ模索中やし、自分達だけじゃなくて色んな人を巻き込んでいかないと出来ないことばかりやと思うけど、みんなが応援してくれるこの地区でなら何か形にしていけるんじゃないかなって思えるんです。でも、ほんとにまだまだ具体的にはなってないんです。とりあえず、友達を地域に案内する延長で、平区のガイドとかやってみよかな(笑)
いくみ:僕も平区長とかに立候補してみよかな(笑)
インタビューを終えて
ー東夫婦が語ってくれた夢は、町づくりの話でした。移住を推進する中で、移住者を呼びこむ事は大事ですが、同時に魅力的な町を作るという目線がないと、多くの人から来たい・住みたいと思ってもらえる町にはなっていきません。自分自身が楽しむという気持ちを大事にしながらも、自分達が出来る事を考えて動こうとしてくれている、移住してくれた若い夫婦がそういう目線で町の事を考えてくれている事が何よりも嬉しいなと思います。今後に期待です!
東 生海さん・東 ゆりかさん。2022年に兵庫県から移住。パラオで結婚し、現在二児を子育て中。旅行や音楽が趣味のご夫婦。生海さんは、船の修繕やメンテナンスのため、和歌山市を中心に仕事、ゆりかさんは、飲食業のパート等をされています。
2022年に兵庫県から日高川町初湯川(うぶゆがわ)平(たいら)地区へ移住した東 生海(いくみ)・東 ゆりかご夫妻。平地区には、日本一長い藤棚として有名な藤棚ロードの他、食事処と宿泊施設を兼ね備えた愛徳荘、スポーツなどを楽しめるみやまドーム、地元の方に愛される神社などもあります。二年毎に住まいを転々としていたというご夫婦に、二年たった今、日高川町への移住後についてインタビューで伺いました!