移住のキッカケについて
―では、さっそくになりますが、日高川町へ移住された理由をおしえていただけますか?
ケンゴ:やっぱり環境ですよね。「和歌山県良いなー」とは思ってたんです。それから移住先として、和歌山市や白浜町、印南町など県内の様々な市町村をまわりました。その中で物件の状態や周辺の雰囲気だったりの環境が一番良いなー、と思ったのが日高川町だったんです。
ー物件は購入されてますよね。いきなり物件を購入することに不安はなかったですか?
ケンゴ:不安はなかったですね。当初は、賃貸も検討していたんですよ。でも、賃貸では、(借り物である以上は)条件も色々と付きますし、住みたいなーと思える物件と出会えなかったんです。だから、自分の条件を考えたら購入してしまった方がいいという判断になりましたね。
ー物件との出会いは運命的な要素もありますからね。…とはいえ、購入された物件も自分の物になるまでに色々と壁がありましたよね。
ケンゴ:そうですね。購入を決めてから自分のものになるまで半年ぐらいかかったと思います(笑)。農地付きの物件だったので農地法の制約もありましたし、一部、家主さんの親族名義の建物も含まれていたので、そういった整理の手続きをしていただくのにすごく時間がかかりました。だから当時は、ヤキモキもしましたが、田舎の物件でなんの壁もない物件と出会えることにそもそも期待してなかったので、許容できましたね。
空き家改修補助金の制度改正があって、補助上限額が上がったりするタイミングだったので、結果的には良かったかなと思ってます。(笑)
改修した空きのBEFORE/AFTER
仕事や暮らしの変化について
─移住の相談をされていた頃から、起業を視野にいれていたと思うのですが進展はありますか?
ケンゴ:カフェを作る計画でわかやま地域課題解決型補助金の申請をしていました。そのために申請書や企画書など色々と準備していたんですが、今回は結果が出る前に辞退しました。
─どうして、辞退されたんですか?
ケンゴ:タンドールという調理器具をつかって、ナンをつかったメニューを提供するカフェを開こうと考えていたんですが、小さな畑にカフェをつくって提供しよう考えていたんです。ただ、畑という場所にカフェを建てたりするのは許可がもらえないんですよね。なので、農地から宅地へ転用した上でカフェに利用するってことも考えたんですけど、購入後すくなくとも3年間は宅地への転用が認めらないという農地法のルールなどがあって、計画が進められなくなってしまいました。
ケンゴ:あと、半年間住みながら人の流れを観察していたんですけど、この環境でカフェを構えたとしても集客がかなり難しそうだなと思い始めたのも理由です。もともとの僕の移住目的は、好きなことをしながら生きていくなんですよ。働きたくないとかそういうことではなくて、やっていて楽しいことを仕事にしていたいんです。
起業補助金を利用した場合は、事業が上手くいかなかったとしても5年間は継続しないといけないんです。事業計画を変更して、キッチンカーで事業展開するような形にすれば、もしかしたら補助金は採択されていたかもしれなかったんですけど、この計画が、本当に自分が描いていた楽しい暮らしに繋がるのかなと思って、一旦立ち止まることにしました。
─補助金を利用すると、縛りはついてまわりますからね。移住したての頃って、気持ちが高ぶってる事が多いので、一度立ち止まってみることも大事だと思います。
ケンゴ:そう思います。今回は立ち止まって良かったんじゃないかなと思いますね。自分が理想とする暮らしを軸に考えて、今後の働き方を改めて考えているところです。
これからしてみたい事について
─カフェ計画はいったん立ち止まったとのお話ですが、他にもやっていきたいことがあったりするんですか?
ケンゴ:何か一つに定めているわけじゃなくて、なんでもやってみたいと思っています。生業は、何個あってもいいと思うので。…というよりも、そういう生き方が出来るのが田舎なんじゃないかと思ってますね。
天然石の販売なんかもネットで始めてみたりしていますし、空き家をリノベーションするような仕事もいずれできたら面白いんじゃないかなーと思ってます。知り合いに、大工さんやクロス屋さん、電気工事士さんなどがいるので、そういう人と手を組めれば、結構いろんな事が出来ちゃうんじゃないかなと思ってますね。
あと、和歌山って自然が豊富なので、(県全体でみれば)外国人の方がいっぱい来てますし、まだまだポテンシャルも秘めてると思うんです。ただ、外国人に対応できる人材が少ないと思うので、そういった点でまだまだ可能性は残ってるなと思ってますね。
これから移住される方へのメッセージ
─移住した理由と重複するかもしれませんが、日高川町の魅力ってどんな点だと思いますか?
ケンゴ:しっかり田舎な所が良いんだと思います。市街地まで行くのに30分かかるような場所ですけど、それぐらいの田舎である事がむしろ僕にとっては魅力なんです(笑)。和歌山県の中には、市街地もあると思いますが、僕はそういう場所に移住したい、とはあまり思わなかったですね。
僕の友人も何人か遊びにきてくれましたが、来てくれた友人は100%の確率で「良い所やなー!」って言ってくれてます。ご近所さんからもお野菜いただいたり、みんなに暖かく迎えてくれてるなー、ということを日々感じますね。
─これから移住を考える人に対してメッセージはありますか?
(テレビやネットとかで)移住の失敗談とかも、山ほどあると思うんですけど、結局は、その人のマインド次第だと思うんです。移住して失敗だと感じる人は、無いものを求めていたりとか、自分から人と距離をとっていたりとか、そういう原因があるんじゃないかなと思うんですよね。だから、これから移住を考える人には、「(環境を)受け入れるマインドさえあればなんとかなる」と伝えたいですかね。
インタビューを終えて
日高川町は市街地と比べれば不便な町です。ですが、不便に勝る自然の魅力を感じる方もいます。そういった人は、日本全体でいえば少数派なのかもしれませんが、そういった魅力を強みに出来る町であってほしいと、私自身も願っているところです。いずれにせよ、田舎であれ都会であれ、あらゆる事に対して、寛容で柔軟なマインドを持ちあわせていれば、どんな環境であっても楽しく生きられるのかもしれませんね。
安川 謙吾さん。2024年に京都府から移住。飲食業勤務を主に、様々な職種を経験。20代のほとんどを海外で生活してきた。
2024年3月に京都府から日高川町三十木(みそぎ)に移住したケンゴさん。大学を卒業後、すぐに日本を飛び出し、オーストラリア・カナダ・アメリカ・メキシコ等、様々な国で海外生活をしてきたそうです。まだ日高川町に来てから半年程度でバタバタしている頃ですが、移住して間もないからこそ新鮮な記憶で話せることもあると思い、お話を伺うことにしました!