素敵なログハウスの中に一歩入ると、そこにはインテリア雑誌に掲載されているようなオシャレ空間がありました。空間デザイナーをされている酒井さんは現在、大阪と和歌山の二拠点居住というライフスタイルを選択されています。二拠点居住をすることになったきっかけや、二拠点居住の良さ、田舎ならではの仕事や人との繋がり方などについて話してくださいました!
目次
田舎に住むことで自分にどんな化学反応が起こるのか
ー日高川町に住むきっかけは何だったんですか?
酒井:コロナで仕事が止まった中で、ただ都会で経済が動き出すのを待ってるだけって年齢的にどうなんだろう?って考えた。
……もう、いつ死ぬかわからない年齢じゃないですか。
ーいやいや!まだまだ若いじゃないですか(笑)。
酒井:(笑)コロナになって「普通にリモートで仕事できるやん」っていう認知も、多くの人に与えてくれた。
だから都会に居なくたって、どこにいても仕事はできるよねって思った。自分が大きく環境を変えた時に、どんな化学反応が起こるのかな?って興味があった。
ー今住んでいる家に住むことになったのは、どんな流れだったんですか?
酒井:空き家バンクですね。 最初は古民家を探してたんですけど。探してる中で、今の家が良い感じの建物だなって思ったんで、ここに決めました。
ー立地も決め手になった?
酒井:うん。それも大きいかな。目の前が川だから、部屋から見える景色が開けてる、とか。
歳をとった時のことも考えると、ここの川辺エリアは田舎だけど、近くにスーパーがあるし、病院も近いから立地も決め手でしたね。
田舎暮らしならではの仕事の繋がり方
ー日高川町にある店舗の内装デザインをされたと聞きました。
酒井:はい。道成寺の前にある「レストラン雲水」の内装デザインをしました。
ーどんなきっかけで仕事をすることになったんですか?
酒井:それはね、本当に役場のおかげなんですよ。役場の方が雲水さんに「今度、酒井さんっていうデザイナーさんが大阪から来たんですよ」って紹介してくれて。
雲水さんから、設計施工をしている社長さんに話が伝わった。でも、その社長さんは僕の家の賃貸契約の書類を作ってくれた方だったので。既に僕と社長さんは知り合いだったんですけどね(笑)。
ー積極的に仕事の宣伝をしたわけではなく、ちょっとしたきっかけや人のつながりが仕事に繋がったんですね。
酒井:そうですね。デザインを考える段階で「内装を能舞台みたいにしたい」って話が出てきたので。奈良の墨アーティストさんにご協力いただいたんです。
このアーティストさんは、道成寺で墨絵のライブパフォーマンスのイベントもされてるんですけどね。
その方に松の絵を書いてもらった。絵をスキャンしてデータ化したものをクロスに出力した。ショーケースの背面の壁に、全面に松の絵があるんですよ。
ーつりがね饅頭のパッケージデザインも手掛けたんですか?
酒井:そうです。紀州備長炭を練り込んだ、黒いつりがね饅頭のパッケージデザインをお手伝いさせてもらいました。
今まで来たことのないお客さんが来たり、リニューアル前より売上を上げるのが、リニューアルの1番の目的。
そのきっかけの1つに、素材にこだわったり、パッケージデザインをガラッと変えたプレミアム饅頭を作ってみてはどうでしょう?ってプレゼンの時に提案したんです。
そこから実際にデザインさせてもらうことになった。
酒井:都会にはいっぱいデザイナーがおるけど。日高川町におるデザイナーさんって言ったら、 人数は多くないから。
存在が大きかったり、繋がりやすいのかな?って思います。
仕事との出会い方は都会とは違ってビックリしたけど。こっちで仕事していて「楽しいな」って感覚があります。
移住者は同じマインドを持っているから繋がりやすい
ー美浜町のフリーマーケットに出店したんですよね。それはどんなきっかけだったんですか?
酒井:それも町役場関係(日高川移住受入協議会)のイベントがきっかけでした。
移住者の交流会を開いてくれたとき、会場が「Soundcafé NEIRO」だったんです。
NEIROさんは、近隣のイベントの機器レンタル依頼が来るくらい、しっかりとした音響設備を持ってるライブハウスなんですよ。
「こんな田舎に良いライブハウスがあんねや」って思って、驚いた。
交流会でNEIROさんと話しながら「いずれ、何か一緒に面白いことしたいな」って思って。オーナーさんと名刺交換させてもらったんです。
連絡を取り合う中で、NEIROさんが10周年イベントをするためにクラウドファンディングしているって知って支援させてもらった。
でも、せっかく支援するんやったら自分もイベントに出よっか、って思って。トゥクトゥクと、自作出版の絵本を持って出店した。
酒井:日高川町に住み始めて、新しい人たちとすごい勢いで出会えてる。日高川町は移住にけっこう力を入れていると思う。
移住者同士のコミュニティづくりもサポートしてくれるので。それが大きいですね。
移住者って、元々都会に住んでいた人が何らかの目的を持って、ここ(日高川町)に来てるじゃないですか。
だから、移住者が思ってることって共通してるところがあるのかなと思ってるんです。移住者だってだけでも、 なんか同じ匂いがする感じ。
あとは、移住して「何かチャレンジしたい!」って思っている人も多いから。そういう意味で繋がりやすいのかも知れませんね。
酒井:僕、スパイスカレーを作るのが好きなんです。
僕がチャレンジしたいことの1つに「カレー屋をやりたい」っていうのがあるんだけど。自宅では飲食店の環境が整っていない。
NEIROさんに、その話をしながら「キッチンを間借りさせてもらえませんか?」って言ったら「いいよ〜」ってサラッと返事してくれた。
まぁ、まだ実現できてないんですけどね(笑)。
ーぜひ実現して欲しいです!食べに行きます!
二拠点居住で家族との絆が深まった
ー二拠点居住の良さって、どんな所にありますか?
酒井:僕の家族は、みんな大阪に住んでる。だから、今は家族と一緒に過ごすのが当たり前じゃなくなった。
家族は特別な存在だっていう認識が、より強まった、みたいな。
だから、むしろこっちに来てからの方が家族の仲は良くなってる。感謝し合ってるみたいな感じで。絆が強くなったのかな。
子どもたちにとっては、久しぶりにお父さんに会えるっていうレアキャラ感がいいのかも(笑)。
ーレアキャラ(笑)。大阪には週末だけ帰るんですよね?
酒井:そう。娘を習い事のお迎えに行って帰宅して。そのあと家族みんなで夕飯を食べるのが習慣。
子どもが日高川町に遊びに来ると、都会とはぜんぜん違う遊び方を知れるから良いんだよね。
年末に娘が来てたんだけど、めちゃくちゃ寒い中、トゥクトゥクに乗ったら「今が一番人生の中で楽しい!」ってキャッキャキャッキャ喜んでた。
ーステキ!娘さんにとってすごく良い経験ですね。
ー子どもには色んな世界を見せてあげたい、って思いがある?
酒井:そうですね。僕が息子に書いた絵本の内容と同じなんだけど。自分の足で歩いて、自分の目で見て、いろんな人と喋ってほしいと思ってる。
酒井:この本は、まだ生まれる前の息子に向けて書いたんだけど。
夢って、なかなか人前で言いにくい環境もあるかも知れないけど。全然そんなことないよ、って。まず夢を持つ。
そこから、夢を叶えるためにいろいろ見て、勉強する。それが当たり前なんだよ、って。
僕が日高川町に来るって決めたときも、周りからは「だいぶ頭おかしいな」って言われたんだけど(笑)。
子どもたちには、新しいことしたら、こんな楽しいことあるよ、みたいなことを伝えられるんじゃないかなって思ってる。
酒井:ただ、この家は元々売り家として出されていたのをお試しで2年間賃貸で住んでるから。近いうちに購入するかどうかの決断をしなきゃいけない(笑)。
この契約自体は、良い取り組みだと思います。いきなり購入するよりも期間内に新しい土地のことを知ったり、人間関係を作っていくことができるので。
デザインの力で地域を明るくしたい
酒井:デザインの力で地方創生的なものができたら、1番嬉しいし、楽しいなって。僕にそこまで力があるかどうかはわかんないけど。
せっかくここ(日高川町)に来たんだったら、関わる人みんなが楽しいことができたらいいな、って思ってる。
ー良いですね!この記事のタイトルが決まりました!(笑)
酒井:仕事仲間と、道成寺でプロジェクションマッピングとかしたら面白いんじゃないか、って話で盛り上がったりすることもあるんですよ。
この町で、デザインで何か面白いことが出来たら良いな、って思ってます。
酒井将守(さかいまさもり)さん
兵庫県神戸市出身。職業は空間デザイナー。就職の時、大好きな太陽の塔の近くに住みたい!と、大阪府茨木市に住み始める。2021年7月に日高川町の物件を賃貸契約。現在は茨木市と日高川町に事務所を構えた、二拠点居住を楽しんでいる。