農業に興味のある方は、「日高川就農ガイド」を見てね。

未経験から自然農に挑戦。獣との戦い・複業・子育て・想定外だらけの奮闘記

大阪府堺市から2011年4月に移住してきた神内さん。前職は病院のメディカルトレーナー。奥さんと移住後に生まれた長女と3人暮らし。様々なお仕事を組み合わせながら、理想の自然農に取り組んでいます。

自然農・林業・スポーツ指導・民泊。「複業」で生活を組み立てる

いきなりですが、ズバリ、どんな感じで生計を立てているか教えてください。

自然農がやりたくて移住したので、メインの仕事は農家です。主にネット通販で、個人向けに販売しています。でもそれだけでは不安定なので、森林組合で週2~3日ほど製材のアルバイトに行っています。それから、不定期で農家民泊の受け入れも。あと、健康運動指導士の資格があるので、行政主催の運動教室とか、ウォーキングイベントの講師をしたり。時々ですが、個人的に頼まれてコンディショニング(体の不調を改善する施術)をやったりもします。いろいろやっていますが、まあ正直言って、経済的にはカツカツですよ(笑)

 

めちゃめちゃ忙しそうですね。自然農や農業の経験はあったんですか?

大阪にいた頃は家庭菜園程度の野菜作りはしていたけど、それはあくまで自家消費用。売るための「農業」に関しては、まったくの未経験です。移住してからは、隣の御坊市にある県立の就農支援センターに通って色々教わってきたけど、そこで教わったのは基本的に農薬も化学肥料も使う「慣行栽培」。自然農の手法や売り方については、独学で本やネットを見て勉強しました。実際に移住して畑を始めてからも、やりながら試行錯誤という感じです。

森林組合や運動教室のお仕事はどうやって見つけたんですか?

森林組合のほうは、移住相談でお世話になった役場職員の人の紹介で短期のアルバイトに行ったのがきっかけ。その後も時々単発で手伝いに行っているうちに、本格的に来ないかと声をかけてもらいました。
運動教室のほうは、移住した時に御坊保健所に自分の職務経歴書を提出して、「何かお仕事あれば紹介してください」と伝えておいたんです。そしたら、ちょうど和歌山国体が近かったこともあって、スポーツ関連のイベントがたくさんあり講師に呼んでもらって。その縁で、今も色々お仕事させてもらっています。

不本意ながら、狩猟免許取りました

自然農に取り組む中で、いちばんタイヘンなことって何ですか?

獣害ですね。まあ普通の農業やるだけでも獣害は大変なんですけど。自然農って、集落の中の良い立地ではなかなかできないんですね。農薬を使わないと虫が湧くと言って嫌がられることもあるし、隣の農地からのドリフト(農薬飛散)があると作物を作れないので。それで、ちょっと離れた山沿いとかでせざるをえない。そうすると、真っ先に山の動物たちの標的になっちゃうんですよね。

それで狩猟免許を取得されたというわけですね。

本当はやりたくないんですよ。だって捕まえたら殺さないといけないでしょ。そもそも血見るのも苦手で。でも獣害があまりにもひどくて、ひどい年は年間80回くらい畑荒らされて、野菜の年間売上が8万円みたいな年もあって。これじゃ商売にならないから、仕方なく罠の免許取って、畑の周りにだけ掛けてるんです。多いときは猪鹿だけで年間15頭くらい獲れます。アナグマとか小動物も含めたら結構な数になりますね。

本当に野生動物が多いんですね。そうやって獲れた獲物はどうするんですか?

鹿や猪はできるだけ解体して肉にします。これもかなりの時間を取られるので、本当はやりたくないけど、もったいないし。鉄砲の免許は持っていないので、箱罠に入った獲物をワイヤーで固定して、ナイフで止め刺しするんですけど、これがもう大変で。獲物は暴れるし、自分も手とか怪我するし、すごくしんどい。やりたくもないのに…。

本当に「やりたくない」という気持ちが伝わってきます…。

好きで狩猟やってる人だったら、かかってたら「やったー!」ってなるけど、自分の場合「うわーかかってるよ…」って超ブルーな気持ちになりますね。

6歳にして十八番は「スーダラ節」?

子育てに関して、メリット・デメリットがあれば教えてください。

メリットはやっぱり、環境が良いこと。近所の人も子どもを気にかけてくれるし。子育てするなら、大阪よりこっち(日高川町)のほうがいいですね。デメリットとしては、何かあったときに病院がちょっと遠いことかな。かかりつけの病院へは車で20分くらい。ただ、渋滞や信号待ちがないので確実に20分で行けるというのはいいですね。時間のめどが立てやすい。都会だと不意に渋滞につかまったりして、予定が狂うのがすごいストレスだから。総合的には、デメリットよりメリットのほうが大きいです。

お子さんは今年から小学校ですね。お友達は多いですか?

はい。今年は同級生が19人いて、多すぎず少なすぎずちょうど良いです。近所にも友達が住んでいるので、よく遊びに来てくれます。学年の違う子や歳の離れた友達ともよく遊んでます。

色々な世代と日頃から交流があるのはいいことですね。

そうですね。都会の大規模校だと同級生ばかりになりがちなので。
世代を超えた交流といえば、年に一度集落のカラオケ大会があって、その練習で60代のおばちゃんとかが選曲したのを歌うから、最近「スーダラ節」とか覚えてきて。

早くも仕上がってきてますね!

はい。将来が楽しみです(笑)

これから移住を検討される方へ、メッセージをお願いします。

よく「都会の人間関係が嫌だ」とか「田舎でのんびりしたい」とか、田舎を逃げ場のように考える人がいますが、そういう考え方ではうまくいきません。人間関係は都会よりも濃いし、田舎は何かと忙しくてのんびりなんてとてもできないですから。田舎暮らしを考えるなら、自分なりの理想とか、実現したいことを持って、ポジティブな気持ちで臨むのがいいと思います。

ありがとうございました。最後に、個人的な宣伝などをどうぞ!

農家民泊「花の音」では、一般のお客様はもちろん、移住希望者さんの宿泊も大歓迎です。ぜひ一度遊びに来てください。
日々の自然農の様子については、ブログ「気ままにLOHAS LIFE♪」で発信しています。