日高川町が大東建託の調査により、関西圏にて幸福度ランキング2位を獲得しました。
(参考:街の幸福度 自治体ランキング<関西版>|街の住みここち&住みたい街ランキング 2023|いい部屋ネット (eheya.net))
こういった評価をして頂けるのは、移住を進める立場としても大変うれしいことです。
ただ、「どういった点が評価されて日高川町がランキングの上位を得るに至ったのか」が気になったので調査結果について詳しく確認してみることにしました。
なお、本文で使用する数値はまちづくり支援活動の一環として大東建託が自治体向けに無償提供している「いい部屋ネット街の住みここちランキング2023<詳細データ・和歌山県日高川町版>」以後、『出典』)のデータから「移住」の参考になりそうな情報を転記したものとなっております。
2024年2月8日 大東建託より「出典の一部データに誤りがあった」といった旨の連絡を受け、記事を訂正。
調査の内容
調査方法:インターネット調査
回答者:滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県 居住の20歳以上の男女、2020年・2021年・2022年・2023年の延べ141,941名を対象に集計
(2019年:19,565名/2020年:30,354名/2021年:31,841名/2022年:29,961名/2023年:30,220名)
評価については、いずれもアンケート回答者の主観による点数を元としています。
なお、日高川町の回答者は、54名です。
調査結果作成時の人口は9509名となっており、人口に対する回答比率は、0.57%です。
(関西圏の各自治体の人口に対する平均回答比率は、0.6%)
日高川町の回答者の属性をまとめたものが、下記で示す表になります。
平均年齢 | 男性 | 既婚 | 子供あり |
47歳 | 30名(55.6%) | 45名(83.3%) | 39名(72.2%) |
孫あり | 大卒以上 | 院卒以上 | 夫婦両方大卒以上 |
13名(24.1%) | 23名(42.6%) | 2名(3.7%) | 7名(13.0%) |
夫婦院卒以上 | 生保受給中 | 学生 | 就業中 |
0名(0.0%) | 0名(0.0%) | 0名(0.0%) | 42名(77.8%) |
正規雇用 | 平均個人年収 | 平均世帯年収 | 平均通勤時間 |
28名(51.9%) | 337万 | 604万 | 19.7分 |
週労働時間 | 通勤電車 | 通勤クルマ | 駅徒歩15分以内 |
27.7時間 | 1名(1.9%) | 31名(57.4%) | 7名(13.0%) |
持ち家 | 戸建て | マンション | 平均築年数 |
39名(72.7%) | 50名(92.6%) | 0名(0.0%) | 21.6年 |
平均居住歴 | 地元出身 | 地縁あり | 引っ越ししない |
16.8年 | 25名(46.3%) | 37名(68.5名) | 41名(75.9%) |
緑マーカーは全国平均+1標準偏差(偏差値60)以上、赤マーカーは全国平均-1標準偏差(偏差値40)以下の場合。つまりは、特徴的な数値という事になります。
回答者の傾向として、既婚者で戸建て住まいの方が多いという特徴があるようです。
評価の内容
ここでは、出典の中から、主に下記の3つの点を抜粋して掲載しています。
- 街の住みここち調査
- 街への気持ち
- 幸福度について
今回、日高川町が関西圏で2位を獲得したのは「街の幸福度ランキング」です。幸福度は住民が10段階で評価したアンケート結果を自治体ごとに集計して、ランキングを作成されています。
1.街の住みここち調査
まずは、住みここちの調査結果について確認してみます。本調査において、住みここちは、8つのカテゴリーで評価されています。ここでは、出典から 偏差値で評価されているデータに絞って掲載しています。
なお、偏差値は「50」を平均値とした値で、偏差値60以上の項目については緑マーカー、偏差値40以下の項目については赤マーカーで色付けをしています。
日高川町のカテゴリー別の偏差値を、以下にまとめます。
- 生活利便性・・・38.6
- 交通利便性・・・43.3
- 行政サービス・・・44.7
- 静かさ治安・・・70.8
- 親しみやすさ・・・54.6
- 物価家賃・・・61.4
- 自然観光・・・61.7
- 防災・・・57.1
次に、各カテゴリーの中身を項目別に詳細に評価をしたものを掲載します。
生活利便性(偏差値:38.6)
おしゃれ・洗練さ | デパート等の 大規模商業施設の充実度 | 雑貨、花屋、カフェ等の充実度 | 商店街の充実度 |
40.8 | 36.0 | 32.8 | 37.2 |
映画館・劇場等の娯楽施設の充実度 | 高級感・ステータス | 新しいお店や商業施設等の街の活性度 | 飲食店の充実度 |
47.3 | 43.7 | 36.9 | 30.0 |
ランドマークや話題のスポットへの近さ | 再開発などの将来的な街の発展性 | 賑わい | 博物館や美術館等の文化施設の充実度 |
37.1 | 39.8 | 42.2 | 36.4 |
深夜営業の店の充実度 | スクール・習い事施設の充実度 | バーや居酒屋など飲み屋の充実度 | 新しいことへの住民の柔軟性 |
26.8 | 29.7 | 30.1 | 52.1 |
フィットネスなどスポーツ施設の充実度 | 行政による積極的な街のPR | ファミレス・コンビニ等の充実度 | 美容院・酒屋・薬局・書店等の充実度 |
37.6 | 42.1 | 31.7 | 34.5 |
街並みの綺麗さ | スーパー・量販店等の充実度 | 歩いて生活する良さ・歩行者への優しさ | 不動産の資産価値の高さ |
57.8 | 28.2 | 41.5 | 45.7 |
外国人の多さなどの街の多様性 | 郵便局、銀行等の充実度 | ||
54.1 | 25.7 |
交通利便性(偏差値:43.3)
幹線道路へのアクセスの良さ | 都心へのアクセスの良さ | 高速道路へのアクセスの良さ | 勤務先・通学先へのアクセスの良さ |
43.4 | 42.4 | 55.2 | 46.2 |
電車・バスの混雑度合い | |||
56.5 |
交通利便性という点においては、偏差値は「43.3」と平均値以下です。「電車・バスの混雑度合い」については、そもそもの利用者が少ないために混雑が起こらず、高い評価につながっているものと推測されますが、交通機関の運行本数などが少ないことについては言及されていないようです。日高川町での生活には車は必須とお考え下さい。
行政サービス(偏差値:44.7)
保育園・児館館等の充実度 | 小中学校や塾の教育の充実度 | 子供の医療費等の充実度 | 介護施設やデイサービス施設等の充実度 |
36.4 | 41.8 | 68.1 | 41.3 |
図書館等の公共施設の充実度 | 介護保険料が安い等の行政サービスの充実度 | 病院等の医療機関の充実度 | 公園や緑地・緑道等の充実度 |
31.3 | 49.4 | 38.0 | 38.0 |
ゴミ収集の頻度の高さなど | |||
41.6 |
行政サービスという点においては、偏差値は「44.7」と平均値以下です。各項目を見ると、保育園や図書館・病院などの施設が少ないことが低評価につながっているようです。一方で「子供の医療費等」の支援制度ついては、高評価となっており、子育て等の支援制度が充実していると感じてもらえているようです。
静かさ治安(偏差値:70.8)
騒音や騒々しさのなさ | 閑静さ | 治安の良さ | 道路の混雑度合い |
71.3 | 68.6 | 69.2 | 76.0 |
パチンコ屋等がないこと | ゴミ焼却場等がないこと | ||
55.0 | 49.8 |
静かさ治安という点においては、偏差値は「70.8」と高評価です。「騒音や騒々しさのなさ」「閑静さ」といった点が、高く評価されており、自然豊かで工場などが少なく、開発行為があまりされていない田舎であることが高い評価につながっているのではないかと推測されます。「治安の良さ」についても高い評価となっており、人口密度が低いこと等が関連しているのではないかと推測されます。
親しみやすさ(偏差値:54.6)
気取らない親しみやすさ | 地元出身でない人のなじみやすさ | 地域の繋がり | 近所付き合いなどが煩わしくないこと |
55.6 | 55.3 | 63.4 | 48.3 |
地域イベントやお祭りなど | |||
45.0 |
親しみやすさという点においては、偏差値は「54.6」と平均値以上です。「地域の繋がり」が高評価となっており、田舎の繋がりの強さを表す結果となっております。
物価家賃(偏差値:61.4)
家賃や不動産価格の安さ | 物価の安さ | ||
53.4 | 54.2 |
物価家賃という点においては、偏差値は「61.4」と高評価です。一般的に考えると、家賃や不動産価格は生活利便性と相反する要素だと推測されるので、生活利便性が低い分、こちらの評価が高くなっているのではないかと推測されます。ただ、大阪へのアクセスも車で60分~90分程度で行く事が出来、自然環境を満喫できる場所であるという点では、穴場だと考えられる方も少なからずいらっしゃるかもしれません。物価の安さに関しては、ガソリンなどは少し高い傾向がありますが、新鮮で安価な野菜や果物を入手しやすいかと思います。
自然観光(偏差値:61.7)
海や川・山などの充実度 | 有名観光地や景勝地などの充実度 | 歴史、伝統 | |
70.6 | 40.7 | 50.0 |
自然観光という点においては、偏差値は「61.7」と高評価です。項目別の評価では、「海や川・山などの充実度」が高評価でした。
山や川などの自然環境はきわめて豊富で、海に面してはいないものの気軽に海へもアクセスできるという点は、大きな強みだと感じています。自然に触れ合うという感覚というよりは、自然に囲まれて生活しているという感覚が近いかもしれません。
防災(偏差値:57.1)
津波の心配のなさ | 地盤の心配のなさ | 密集地火災の心配のなさ | |
53.1 | 52.7 | 68.8 |
防災という点においては、偏差値は「57.1」と平均値以上となっています。日高川という大きな川が町を横断しており、山間部に立つ家も多いため、氾濫や土砂崩れなどのリスクはありますが、海に面しておらず、津波等の心配はほとんどないといえるかと思います。また、2019年には、500人程度まで収容可能な避難所、救援施設などの集積拠点などとして機能する防災センターも完成しております。
2.街への気持ち
つづいて、街への気持ちというデータについても抜粋させていただきました。
誇りを持っている | とても愛着がある | なにか貢献したいと思う | 友人や知り合いが多い | ずっと住んでいたいと思う |
50.2 | 55.6 | 56.0 | 67.4 | 59.7 |
全体的に、平均値以上となっており、日高川町のことを気に入っているという傾向があるといえます。特に、「友人や知り合いが多い」という項目では、高評価となっておりました。回答者属性を見ると68.5%の方が「地縁あり」と回答されているので、この項目が高くなっているのかもしれません。ただし、「地元出身」と回答している方は46.3%と半数以下となっており、移住した方・お嫁さんに来た方等も半数以上含まれていると推測されるので、そういった方も友人や知り合いなどの縁を作る事が出来ていると推測できます。
移住者の私自身の感覚としても、町民性として優しい方が多く、移住に関する取組の歴史も長いので移住者を受け入れ慣れている方が多いように感じます。
3.幸福度について
幸福度については、日高川町は「75.4」という極めて高い評価になっており、今回の幸福度ランキングで2位という評価になっています。
「人によって何を幸福と感じるか」は曖昧なもののため、幸福度の評価は難しいものです。ただ、「『自分は幸せだ』と答えてくれている回答者が日高川町には多かった」という事はこの結果から言えると思います。これは、大変うれしいことですね。
幸福度は、曖昧なものと書きましたが、街の住みここちランキング2021<総評レポート>では、重回帰分析という分析手法を用いて、幸福度と関係があると思われるパラメーターを15の要素に絞っています。
下の図は、その15の要素と幸福度の関係性をパス解析によって得られたパス図で示したものになります。
主観的幸福度を目的変数とした構造方程式モデリングによるパス図
出典:街の住みここちランキング2021<総評レポート>
正の値は、幸福とつながりの強い要素、負の値は、不幸とつながりの強い要素だと解釈していいかと思います。また矢印の太さは、それぞれの関係の強さを表しています。
分析結果では、幸福度とパラメーターの関係性について下記のようにまとめられています。
- 女性であること、未来は明るいと思っていること、仕事が順調なことは単独で幸福度を押し上げます。
- 持ち家は建物満足度と正の相関があり、建物満足度は地域満足度と正の相関があり、建物満足度・地域満足度は幸福度を押し上げます。
- 持ち家であること、世帯年収の高さ、大卒であることは幸福度に直接の影響を及ぼしません。
- 劣等感を感じること、下流だと思うことは単独で幸福度を引き下げます。
まとめ
こういった調査結果をじっくりと見るというのは、あまりする機会がありませんでしたが、「町民の方が町についてどう感じているのか?」を知る良い機会となりました。
日高川町は街の住みここち調査の結果が示す通り、利便性が良いとは言えない町です。
その一方で、幸福だと感じている人が多いということは、人が幸せを感じることに利便性はそこまで重要な要素とはいえないと捉えることも出来ます。
私自身が、日高川町に移住してきて感じているのは、引き算することで見えてくる幸せがあるということです。都会にいると色々な選択肢がありすぎるがために、幸せを得るために色々なものを足し算してしまいがちで、その結果、本質的に求めているものを見失ってしまっているように感じることがあります。
選択肢がたくさん在ることもまた幸せなことだと思いますが、選択肢を減らしてみることで大事にしているものの優先度が見えてくるという事もあるのではないでしょうか?
「関西圏で幸福度ランキング2位!」という結果には、少し懐疑的な気持ちもありましたが、色々と思いをめぐらすと自身の実感値と大きく違わないようにも感じています。
日高川町への移住を検討する際の1つの参考資料にしていただければと思います。
生活利便性という点においては、偏差値は「38.6」と低評価でした。各項目を見ると、買物や習い事、飲食店などの店舗が少ないことが低評価につながっているようです。ただ、日高川町の面積は、331.59㎢と和歌山県内で3番目に面積の広い町で場所によって環境も大きく変わります。御坊市などの市街地に近いエリアで居住する場合には、これらの不便を感じる事はあまりないかもしれません。